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T-010

うさ子の世界にも梅雨がやってきました。湿っぽい空気の中うさ子は憂鬱です。
 
「あぁ、このモヤモヤは何?…もしかして、恋!?」湿っぽい環境なのか、うさ子は大きな誤解をしています。
 
「あ、わかった!これがかの有名な『マリッヂブルー』なのね!」
 
「やはりブルーは成敗しなくちゃだわっ」うさ子は家中の青いものにあたりちらしはじめました。
 
あたりちらしたのはいいけど、あたりちらした分よけいうさ子はモヤモヤしてしまいました。
 
そのモヤモヤが…煙となってうさ子の頭上に集まり始めました。「ま、魔力反応!?」
 
その煙はうさ子になって尋ねました。「…ファイナルアンサー?」
 
うさ子は緊張しながら答えました。「ファ…ファイナルパンサー!!」
 
煙は満面の笑みを浮かべ、かなり間を置いて叫びました「ざーんねん!!」
 
「正解は『ファイナルダンサー』でしたー」と、言うだけ言って煙は消えてしまいました。しかしうさ子のモヤモヤは消えません。
 
うさ子は精神統一をはかるため、『ピンクパンサー』を見ることにしました。
 
テレビをつけたその瞬間、うさ子の目に映ったものは、な、なんと、『ピンク・DA・ンサー』。うさ子はそれに釘付けになりました。
 
それもそのはず、テレビ画面では『アンパンマン』のテーマ曲にのって軽快にバンブーダンスをしている40代後半のおっさんが……
 
「お、おじさま…」うさ子は小さな声で言いました。
 
うさ子は とびちる あせの かがやきで きらめいている おじさまに ときめいてしまいました。 ひとめぼれです。
 
「わたし…わたしもつれていって!!」「ばかいうんぢゃない、うさ子」泣かすシーンですが、その時、空から…
 
何かが降ってきましたが、うさ子は家の中にいるので気づきません。「どずーーーーん!!」
 
と同時に叫び声が聞こえました。「どぢゃーん!!」
 
なんと、先ほどテレビに映っていたおじさまが空から降ってきた模様です。おじさまはほぼ無傷です。
 
その光景は全てテレビに映っていました。生中継のようです。
 
それを観ていたうさ子は「お、おおおじさま!?」と叫び、思わず大技ちゃぶだい返しがサクレツ。部屋中にポテチ散布。
 
「ああぁ、ぽてちがぁ。うさ子の命をつなぐ32のうちの1つなのにぃ!!」うさ子は散布したぽてちを拾い上げようとしたら、
 
「ぱりんっ」足下にあったぽてちの一枚をふんづけてしまいました。と思ったら前になくしたコンタクトでした。「きゃああっ!」
 
叫び声とともに、うさ子はそのコンタクトを口に入れました。「うん、ぽてちもいいけどコンタクトもね。ナイスなしお味♡」
 
そしたらどうでしょう。さっきまでのもやもや憂鬱感が一瞬にしてバラ色に染まりました。
 
「ああっ、このいかにもコンタクトていう『ふうあい』がたまらないわっ」あまりのおいしさに目がイッちゃっています。
 
「むむー…食べ足りないわっ。他に何か…あっ!」うさ子が見つけたのは
 
いつのまにか天井にあったドモホルンの結晶でした。「ああ、リンクル!?」
 
うさ子は顔に染み込ませるドモホルンの結晶を食べました。するとうさ子の肌はすべすべところかムキムキになってしまいました。
 
「ムキムキ…」戸惑ううさ子の前に、突然大岡越前が現れました。「無期懲役、島流しにいたす。ひったてい!」
 
「い、いやああぁぁぁーーーーー!!」悲痛な叫び声と共に、うさ子は瞬間移動しました。無我夢中だったので、ここがどこかわかりません。
 
そこは異国トンプクツーでした「ト、トンプクツーつてナニ!?ってかドコ!?!てか不屈っぽい豚がいるわよ、なにアレ?」
 
「フガー」と鳴きながらそのブタが突進してきます。
 
「いやああっ、こないでぇっ」うさ子の手(足?)に光が集まり、光弾となって豚を直撃しました。
 
「こなくそっ!」豚は紙一重でよけました。
 
「ヌゥ、残像拳かっ!?」唸るうさ子。「ブッフッフゥ~、我が一子相伝の暗殺拳、ヌシに見切れるか?」不敵に笑う豚。
 
「くっ、こうなったら我が家に伝わるあの伝説の魔人『にゅらぴぢょん』を召還するしかないわ……」
 
「うーーーーーーやーーーーーたーーーーーーッ!!!?!!」うさ子は呪文をとなえました。すると…
 
「ちゃーっす三河屋でーす」閃光と共に、三河屋のサブちゃん(29)が召還されました。
 
「あれ?確かサザエさん家の裏戸を開けたはずなのに。」サブちゃんは?マークでいっぱいです。
 
「サブちゃん、やっておしまい!」?マークでいっぱいのサブちゃんを、うさ子は無情にもブタの口の中にほうり込みました。
 
するとサブちゃんは「そりゃ無いよたらちゃ~ん!!」と言いながら、ブタの口の中で『プッチンプリン』を食べ始めたではありませんか!
 
「貴様の目的は何だ!?」豚はサブちゃんを口に入れたまま、器用に喋ります。うさ子は曇り空を見つめ、ぽつり、ぽつりと話し始めました。
 
「あれはちょうど5年前、家飼っていた小鳥が籠から逃げてしまったことから始まった…」
 
話が長そうなのでうさ子は自分の耳を押して早送りしました。
 
……
 
「も一度言うブヒよ。」「こんぐらいの早送りフィーリングで聞き取れやぁーー!!」「む、無理ゆーなブゥー!!」「しゃーない、もっぺんだけやで?逃げた小鳥を追うたんよ、んで…
 
小鳥を追いつづけたらいつのまにか富士の樹海にはいりこんどったとよ、したらばよぉ、前から昔馴染みのあいつが来たとよ……」
 
「あ、あいつとは?」「その昔、悪代官に捕らわれて外国へ売り飛ばされた娘さんじゃ。名前は…
 
『トプンクツ』といって…お前の生き別れの甥じゃ」「甥って、女じゃないのか?ていうか甥と生き別れって…」「だまりんしゃい!」「…」
 
「大体、口に物を入れてしゃべるんじゃありません!」しつけにキビしいうさ子。「わ、わかったブヒ。ごっくん、」「きゃあぁーササササブちゃーーん!?フツウはけやあぁーーー!!」
 
とその時、ブタの食道の3分の1の辺りからサブちゃんの声が……
 
「おーいイソノ~、出してくれよお」サブちゃんはなぜか中島君の物真似をしています。
 
「あら、カツオちゃんなら家族旅行中よ」うさ子はうきえさんの物真似で対抗しました。
 
そうこうしている間に、豚の顔色がまっつぁおに。「い、いき、息ができな…ブファ!」「まあ、激しくモンドリうっちゃってるわ!!ところでモンドリってなに?」
 
するとブタが「モンドリとは雄の鶏の事ブヒ……ってそりゃ雄鶏だっつの~!!ブヒッ」と一匹でのりつっこみをしながら、琵琶湖方面へ去って行きました。
 
「あぁ…もういいや……」心底疲れたうさ子は、梅雨明けにも気づかず家に帰りました。
 
おしまい。
 
『もんどり(翻筋斗)…とび上がって空中で一回転すること。宙返り。とんぼ返り』

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