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T-036

あの時うさ子は何を思ったのでしょうか。これは3日前の星がきらめく夜の話です。
 
いつものように、うさ子はバラの花びらを敷き詰めたベッドで眠っておりました。
 
うなされつつも、気分よく眠っているうさ子の耳に、どこからか声が聞こえてきました。
 
えらくトゲのある声でした。
 
おれはここでは 名の知れた男 誰もがみんな 振り向くぜ…と、何かの歌詞のようでした。
 
かなりのジャニーズ系だと言い張るその男が、歌いながらうさ子に近づいた…その瞬間。
 
キュピリーン。うさ子の目が怪しげに光りました。
 
くっ……何の此れしき 正義の鉄拳 受けてみろ…声は状況に合わせた台詞をはくようでした。
 
「怪我する前に、うちに帰んな!ぼうや!」と、うさ子は正義の鉄拳をかわしながら言いました。
 
「こしゃくなッ…」声の主が姿をあらわしました。
 
さわやかな消臭材の香りとともに、うさ子の初恋の相手が立っていました。
 
心臓を5分の1ほどだしながらうさ子は初恋の相手『ホニュランジュ君』を見つめていました。
 
数十年も前の甘酸っぱい初恋の味を、うさ子はかみしめていました。
 
背の高いホニュランジュ君は、うさ子を見下ろしています。うさ子はなんだかそれが気に入りません。
 
「そうだ、前みたいにかけっこしてみない?」うさ子はかけっこでホニュランジュ君に勝負を挑みました。
 
たしかめるようにホニュランジュ君はうさ子に足払いをかけ、そしてうなずきました。
 
「血、血がッッ!!」うさ子は膝を抱えるように座りこみ、ホニュランジュ君を睨みつけ、
 
「つ~かまえたっ」といってホニュランジュ君を丸呑みしました。
 
てっきり、攻撃してくると思っていたホニュランジュ君。驚きを隠せません。
 
とっくに頭まで飲み込まれたホニュランジュ君は、それでもまだ白く固まったままモガク気配すらないようです。
 
なんとホニュランジュ君は今週のびっくりドッキリメカをうさ子に送っていたのです。
 
にんじん型のメカ達は、うさ子に向かってゆっくりと歩いてゆきます。
 
盗っ人のような歩き方をしたそのメカをうさ子はおいしそうだと思っていました
 
猫なで声を出してメカ達を誘惑するうさ子。メカ達はタジタジです。
 
「残らず食べてしまいたい…!」うさ子は逃げるメカ達を追いかけはじめました。
 
ハリセンを持ったうさ子は無敵です。メカに追いつき、足払いをしかけました。
 
酷いくらいにメカたちはバラバラにされました。
 
「ふふふ…甘いな」どこからか声がした途端、バラバラになったメカ達が集まり、合体ロボに…
 
「へ、平方根は√……」うさ子は突然の合体に脳みそが数学モードに変換されてしまいました。
 
「ホホホホホ、地獄に送ってさしあげますわ」合体ロボはうさ子めがけてデコピンをしてきました。
 
マッハで飛んでくるデコピンを、うさ子は光速で避け、そのまま
 
魅惑のダンスを踊りました。これには合体ロボもタジタジです。ロボは勢い良くバラバラになりました。
 
「む、無茶苦茶かっこ悪い……」謎の声はバナナで釘が打てる温度まで凍ってしまいました。
 
メカっぽい喋りになりながら、謎の声はどんどんどんどん凍っていきます。
 
もう言葉も出ない謎の声でしたが、かろうじてコレだけは言えました。「俺は…俺は魅惑には勝ったからな…」
 
やがて謎の声は山田君(座布団運び)へと姿を変え消滅したのです
 
雪見だいふくを食べながらうさ子は山田君を、家の周りを500ヘクタールほど探しました。
 
よく見ると家の根元に小さくなった山田君がささってました。うさ子は「生きてる?」とつぶやきました。
 
「楽にしてくれ…!」つぶやく山田。かなりピークです。
 
臨機応変という言葉の似合わないうさ子。山田君をラクにしてあげることが出来ません。
 
瑠璃色の光とともに、うさ子は山田君を空へほうり投げました。ついでにうさ子も。
 
「連結しやがったのかよ!いちゅのまにぃ~~~…」うさ子の絶叫が空しく響きます。
 
ロケンロールをBGMに、うさ子が夕日を見つめています。そろそろエンディングのようです。
 
「腕力では…人の気持ちを変えることはできない。変えられるのはハートだ!」とうさ子の心臓が叫びます。
 
「ををぅ!ちったぁ良いこと言うぢゃねぇか!うさ子ぉ!!」山田君の心臓もいい調子で煽り立てます。
 
「んふ。アンタもアタシを見習うことね」うさ子と山田君は空中でガッチリ握手しました。心臓で。

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