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T-056

「マロニー買って下さい、マロニー」クリスマスの夜、うさ子は一生懸命マロニーを売っています。
 
しかし、道行く人は、誰もうさ子に気づきません。うさ子はもっと
 
電飾をつけなければ売れないと思い、民家の飾りをブチ抜いて
 
引きちぎりました。飾りに絡まったおじいちゃんがわさわさ釣れました。「大漁ね!」
 
大漁だったので逆におじいちゃんを売り始めました。発送の転換です。
 
「安いヨー、安いヨー!!」やっぱり道行く人々はうさ子に見向きもしません。
 
「…やはり電飾が……!」そうつぶやくやいなや、おじいちゃんの鼻に豆球を埋め込みました。
 
その策が効果を発揮し、おじいちゃんはバカ売れしました。満員御礼です。
 
「やったわ!これでフグ刺しがたらふく食えるわー」ガッツポーズ・うさ子。
 
ところが、姉さん、大事件が起こりました。今のガッツポーズで、通行人の腹に
 
スマッシュヒット!そのままアテネとかそっちの方に飛んでいきました。
 
「うわっち!うっかり★でも、いい飛びっぷりよねー。んー」
 
飛ばしっぷりに自分で感心していると、そこへ1人の老人があらわれました。
 
「ん"ー…合格っ!!結構、結構っ」とてもえらそうです。
 
象徴としてフサリとしたヒゲちゃんが生えてますから、まず間違いなく
 
じじい飛ばしの第1人者でしょう。己は、飛ばされ続け、30年のプロです。
 
「ワシを、飛ばせ!!」ジジイの電撃発表に心を打たれたうさ子。
 
「Uh、あたい、飛ばすよ、おもっくそ!!」そう言うやいなや、
 
後頭部を思いっきりひっぱたきました。ゴキンという鈍い音がして、
 
老人は…。うさ子はしらばっくれました。「マ…マロニー買って下さい!!」
 
「チ…チムリー?」そういうとヒゲがばさっと抜け落ちました。今夜が峠です。
 
「ごめん…あたい、間違ってた!アンタはアタイを認めてくれた唯一の老人。それを
 
それを…キサマって奴ァァァ!!」うさ子は突然通行人に責任転嫁しました。
 
「ぼぐうっ!?」通行人は倒れる刹那に走馬灯を見ました。
 
「キレイダネ…」通行人は自分の思い出にひたり、悦に入っています。
 
老人もとうとうお迎えが来たようで、こちらも悦に浸っています。
 
ひとり悦に入れないうさ子は、なんとか悦に入ろうと、市原悦子に相談しました。
 
それを、マンホールの穴から全部見ていた悦子は、うさ子にこうアドヴァイスします。
 
「マロニーを耳から入れるのよ。そうすれば悦に入れるわ」
 
こうして、マロニーを耳に入れたうさ子は、悦の境地に達し、悦楽王になって余生をエンジョイしました。

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