- 2008/12/15
- テキスト
T-136
「そういえば知ってるー?どっかの国ではね、インスタント料理をマルチャンって言うらしいわよ」なんて1人でつぶやいて歩いているうさ子がいます。
そこの病院の患者さんです。
医者が「これは重症だね」と言いました。
「うさ子さん、お薬の時間ですよ」歩み寄る看護婦。
突き飛ばすうさ子。
それを見ていた医者はリズミカルな動きで
「きみも、ゆいしょ、ただしい、にんげんなら、私の言うことを、ききなさい」と言いました。
「そ、そ、そ、そ、そんなん、言われても、知らないゼ、私は私の生きる道を、進んでいく、だけなのサ」うさ子は答えます。
そんな二人を看護婦は、シラーっとした目で眺めています。突き飛ばされたまま。
「きっつ…」看護婦は吐き捨てるようにつぶやきました。
「私なんでこの病院に入ったんだっけ…」夕暮れの中、たたずむ看護婦の姿は、どこか
間違っているところがありました。
そこで看護婦は新しい病院を求めて街へ歩き出しました。
「私はもっともっともっともーっとすごい病院へ行くのよ」と、うさ子と医者はロケットの如く看護婦の後を追いかけました。
そして先行く看護婦は唐突に走り出します。当然、追いかけるうさ子と医者。
3人は、光の速さを超えました。
うさ子は、空へ。そらと書いて宇宙へ、旅立っていきました。
うさ子はまだしも、看護婦と医者の足には乳酸が溜まりきっていたので、これ以上走ることは出来ず、とうとう重力に負けてしまいました。
落ちていく看護婦と医者を見ながら、自分の俊足に酔いしれるうさ子でした。
そのままうさ子は走り続けて、ついにメロスのもとへ追いつきました。
「さあメロス、一緒にセリヌンティウスに殴られに行こうじゃないか」意気投合した2人は、いつの間にか城を越え、荒野へと走り去り、その後2人の消息を知るものはいませんでした。