- 2008/08/12
- テキスト
T-011
うさ子はある決意をしました。
「素敵な殿方に出会うまで、髪の毛切らない!」
実は人間でいう脇の辺りに1本だけある黄金色の毛がうさ子の髪の毛なのです。それは見事に30センチのウェーブな髪です。
うさ子はそれを「キャサリン」と呼んでいました。通称「エル」です。
エルは苦しいときも嬉しい時もキモチをわかちあってきました。今ではうさ子とエルは信頼の置ける『仲間』です。
しかし、そんな2人(?)にも別れのときが。エルをうっかりどこかにひっかけてしまい、根元から抜いてしまいました。
「あのコンジョ無しがぁ!モーコンぐらいおいてけやあぁーっ!!」そう言いつつも必死でエルを探すうさ子。
しかしエルはいつまでたってもどこを探してもでてきません。困ったうさ子はあの秘密兵器をだすことにしました。
「強制的に引っ張り出す!『強力粘着テープ』ぅ~!!」
「説明しやう!『強力粘着テープ』とは…」と天の声が説明をしていますが、うさ子はそれどころではなく、さりげなく無視です。
強力粘着テープでじゅうたんをべたべたやっていると長い髪の毛が…「違う!これはヨゼフだ!」
うさ子は意外と友達が多いらしく、じゅうたんにあった毛だけてヅラ(部分用)ができてしまいました。
ヅラ(部分用)が余りにもよい出来栄えだったので、うさ子は誰かに見せたい衝動にかられました。
「パンチョね。」うさ子のターゲットは、ぱんちょイトーになりましたが実在の人物・団体とは全く関係ないと思って頂きたい。
さっそくぱんちょの部屋に潜入したのですが、あいにくぱんちょは留守のようです。かわりに弟のポンチョがたたずんでました。
うさ子は初対面のポンチョにしおらしくご挨拶します。「うがー、ぱんちょはどこじゃー!出しやがれー!!」
しかしポンチョは「武器や防具は装備しないと意味がないよ!」と、RPGの通行人のようなことしか言いません。
うさ子は悟りました。「そうか…これから冒険を始めるべきなのね!?ロールプレイングゲームの幕開けね?
でもってラスボスはすごい身内だったりするのね。例えば私の…
エルとか!そうか!エルを探すには旅を始めなきゃいけないのね!!」なんだかうさ子はパニクっている様子。いや、いつも通りでしょうか。
というわけで、早速うさ子は旅に出る決意をしました。「はっ、冒険をするには仲間が必要!どうしよう…
しょうがないわ。出動よヨゼフ!」うさ子は髪の毛と同姓同名のクマのぬいぐるみを仲間にしました。
「まかせておくんなせぃ!あっしの爪でどんな敵キャラもマップタツ…」ヨゼフが喋ってるかと思ったら、うさ子の激ウマ腹話術でした。
「(パクパク)あれ?(パクパク)言葉が、(パクパク)遅れて…」うさ子の腹話術はいっこく堂レベルなのです。
そんなこんなで冒険を始めた3分後、あっさりかつての相棒だったエル(毛)の要塞にたどり着きました。
「いよいよラスボスなのね…みんな、準備はいい?」「武器や防具は(以下略)」いつの間にやらポンチョまで仲間になっていました。
「って、あぁッ!?ポンチョ!なんでアンタがエルを装備してるのよ!!」
「ダッテ、ボクトエルハマブダチナンダモノ……。」とどうやらポンチョはロボのものまねにはまっている様子です。
「今時そんな抑揚のない声なんて流行らないわ。ときメモ2だって自分の名前を読んでくれるのよ」うさ子のダメ出しです。
しかし、ポンチョは無視しました。エルと2人でロボ喋りに没頭しています。
「くっ、通行人レベルの人間のくせに生意気よ!」うさ子はポンチョに時速63キロほどのスピードで斬りかかりました。
そのときです!エルはとっさにポンチョをかばいました!あまりのエルの硬さにうさ子はこなごなです。
粉々になったうさ子の破片は、にょきにょきと伸び、数体のうさ子が完成しました。
分裂(?)したうさ子たちは、なぜかオリジナルより巨大化しています。「ふっふっふ、覚悟なさいな」
「くっ…そうか。貴様らが真のボスなのね!?」うさ子の顔は劇画調です。ポンチョは完全にロボ化していました。
「真のボスちゅかラスボスちゅかエルくれエル。」巨大うさ子達は、せっかちこの上無いカンジでハモりながら要求しました。
すると、ラスボスであるエルがもじもじと恥ずかしそうに「いいよ」といいつつ出てきました。もとはうさ子に生えてた毛なのに。
エルとの再会を喜ぶうさ子。しかしそれもつかの間、エルは隠し持っていた刃渡り50センチの剣で斬りかかってきました。
その時うさ子は、エルの後ろに素敵な殿方発見。「よっしゃ!これで心置きなくぶち切ったるでぇエルゥーっ!!」殺る気満々です。
うさ子は「気合いイッパツ、合いの手はオヒョイヒョイでタイガーバーム1ダース、お願いしまーす」と謎の呪文を唱えました。
すると…エルは……跡形も無く消えてしまいました。
消えたエルに錯乱するうさ子。「えるハ…イキテイルサ。アナタトワタシノココロノナカニ…」ポンチョはうさ子の肩を叩きました。
「そうね…私の心の中に…」
***FIN***