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T-153

あれから五年…。小学生になった少年は、世界中のうさ子を狩る旅に出ていた。
 
右手に銃、心に花束。
 
唇に火の酒、背中に人生を。
 
がらあきの左手を埋めるべく、少年は街へ向かった。
 
少年は左利きであり、左手はもっとも重要であった。
 
街へ向かう途中、瓦礫に埋もれたうさ子を見つけるや否や、少年は即座に狩る体勢に入る。
 
左手はナイフのようにヒュンヒュンと風を切る。もはや左手そのものが武器だ。
 
右手の銃はショックガン。殺傷力は皆無だが、少年の愛銃だった。
 
少年はおもむろに銃を構えると、それでうさ子をガッツンガッツン殴りつける。
 
うさ子の眉間はズタズタで、鬼のような形相と化していた。
 
少年はその顔を、得意のメイクアップ術でおてもやんに仕立て上げる。
 
もはや左手そのものがメイクアーティストだ。うさ子はうっとりしながら散るのだった。
 
「ふ、またつまらないものを…」少年の決め台詞が荒野に響く。
 
しかし、おてもやんは死んではいなかった。おてもやんは少年の背後に忍び寄ると、
 
首を、折った。
 
しかし、折れなかった。優良企業の『首を固定クン』のおかげである。
 
おてもやんを振り切った少年は『首を固定クン』を開発した会社に感謝した。しかし社名が思い出せない。
 
わだかまりを残したまま街に着き、教会へ入る少年は、
 
ふと気がついた。「もしかして、固定しているだけで実際は折れているのではないか」と。
 
それはもちろん杞憂だったが、不安はぬぐえなかった。
 
少年はおそるおそる『首を固定クン』を外した。 折 れ て た …。
 
外した『首を固定クン』ごと、すっぽ抜けたのだ。
 
そのすっぽ抜けた首が教会の彫像と一体化し、何事も無かったかのように歩き去っていった。
 
一方その頃、おてもやんことうさ子は、顔を元に戻す旅に出ていた。
 
伝説の外科医。その噂を頼りに、旅は続く。
 
ふと見ると、すすけたおっさんが「やあ!」とうさ子に声をかけ、うさ子も「やあ」と返した。外科医だった。
 
そのまますれ違い、はたと気づいて振り返る。二度見、三度見、当たり前。
 
外科医の、あまりのオーラの無さにさらに四度見。気づくわけが無い。
 
そんな外科医は、うさ子の背後に忍び寄ると、
 
雨が降る夜、暗い診察室の、ああ、窓に!窓に!

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