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T-178

うさ子は息をひそめて物陰に隠れていました。
 
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…。ハァハァしすぎでもう見つかってしまいそうです。
 
さらにケータイが鳴りっぱなしで、止め方がわかりません。
 
6時にセットしたはずの目覚まし時計も鳴り続けています。
 
さっきからイスや絵画が飛び回り、ウザいったらありゃしません。
 
「ちょっと!うるさいわよ!!」うさ子の黄金の右が大バサミを持った男にヒット。
 
代わりにうさ子のその自慢の右腕を切られました。
 
未練たらしいうさ子は見苦しいので、必死にがまんするうさ子。
 
うさ子はガマンのため、何かのボタンを連打しました。
 
そう、着ているコートのボタンです。
 
連打により、右腕がにゅっと生えてきました。もうがまんしません。
 
右腕がどんどん伸びていきます。もうやめられません、止まりません。
 
伸びる右腕を片っ端から男はハサミで切り続けました。その数2000個。
 
切りすぎて部屋が右腕でいっぱいです。死亡フラグでした。
 
男もいい加減うんざりしてきました。もはや単純労働です。
 
しかたがないので食べてみました。すっぱいうさ子の味がしますか。
 
いいえ、しませんでした。右腕の一本を手に取ったうさ子は丸めて
 
男にくっつけました。男は大バサミで切る気が失せました。
 
こうして腕をつけられてしまっては、うさ子に操られてしまい、言いなりになってしまいます。
 
「いいなりおおばさみたん」という名前で売り出すことにしました。
 
すると、王様のブランチで紹介されました。
 
「こちらが今話題の、えー『あいのりおおわさびたん』?です」
 
今ではハサミをわさびに持ち替え、顔に塗ってマッサージしています。
 
このわさびのつんとくる気持ちよさがセレブ(笑)に大人気!!
 
わびさびを理解してモテカワなでしこ(笑)というコピーでわさびの売り上げが倍に。
 
しょうがもこの流れに乗ろうとしましたが、コピーが思いつかなくて挫折しました。
 
タバスコも賞味期限が切れていて出荷できませんでした。
 
レポーターの言い間違いが成功のきっかけだなんて、と、あいのりおおわさびたん感涙。
 
「いろんなものを刻んできたボクが、こうして感謝されるなんて…!!」
 
あいのりおおわさびたんは、うさ子に感謝の投げキッスをプレゼント。
 
「普通にキモいから…」男に追われるきっかけとなったタブーを、またも踏んでしまったうさ子。
 
壁で大わさびをゴリゴリすりおろしながら迫り来る、あいのりおおわさびたん。
 
それは、大バサミを持っていた頃の感覚と同じでした。
 
うさ子は物陰で息をひそめる暮らしに戻るのでした。ああ無限ループ。

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