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T-030

暗い密室から、この世のものではないうめき声が聞こえます。うさ子です。
 
そのうさ子は生まれたばかりでした。リトル小さいです。
 
うさ子は何か形のはっきりしないものを押しています。
 
形のはっきりしないそれは、うさ子にテレパシーで語りかけます。「…楽しいか?」
 
「おとっつぁん、それは言わない約束でしょ」うさ子はけだるく答えます。
 
「そうか、それならいいのだが…」とテレパシーは語尾をにごします。
 
「だがな、うさ子。お前はこれからは旅立たねばならん。なぜならお前は…
 
選ばれし者、そして呼ばれざるうさ子だからだ!!」
 
「ええっ!?私はいずこへかけださなきゃいけないの?!」うさ子は嘆きます。
 
「西じゃ!西へ向かうのじゃ!さすれば…グフッ」「え!?西には何があるの!?おじいちゃーーーん!!」
 
こうしてうさ子は、おじいちゃんの遺志をひきつぎ、時速30kで勢力を強めながら西北西へ向かいました。
 
「でも、向かってどうするの?」とりあえず走ってますけど。
 
何も考えずに走っていたら、うさ子は地球を半周していました。
 
半周走ったところでうさ子が弱っていきました。エネルギー切れです。「しまった!充電しとくんだったWA!!」
 
そこへナイスタイミングでコンセントマン2世がやってきました。
 
「アァ!!充電させてぇ!たとえ刺し違えてもぉーーーー!!」うさ子は最後の力で駆け寄りました。
 
しかしヒラリとかわすコンセントマン2世。「ただでは、やれんな」
 
が、うさ子はすでに電気を5/6ほどすいとっていました。「うわ!営業妨害だっ!」
 
「ふははははっ、とりあえずこれで、カンベンしてやるさーっ」と走り去っていきました。
 
コンセントマン2世は最後の力を振り絞って、必殺技を使いました。「瞬間移動(テレポート)」
 
するとどうでしょう!お約束ですがコンセントマン2世はうさ子の中へ移動しました。むしろ異動です。
 
うさ子は急にお腹がいっぱいになったので満足げです。「充電完了♡」
 
「さーて、おなかも一杯になったし、ちょっと寝よっと」一呼吸で眠りにつくうさ子。
 
ですがおなかがいっぱいになってすぐ寝てしまったので、体が牛になってしまいました。
 
おなかのコンセントマン2世をはんすうしながら、うさ子は起きあがりました。「よく寝たわモー」
 
しかし、うさ子は体が牛になったことに気が付きません。
 
そんな時、近くの牧場にいた牛たちがモーモー言いながらうさ子の周りに集まりだしました。
 
どうやら牛うさ子に求婚しているようです。牛うさ子は牛たちに胴上げされました。
 
と思いきや、闘牛の練習です。うさ子の体はツノで穴だらけです。
 
「穴だらけで力が出ないよー、誰かアンパンくれー!!」うさ子は力なく叫びました。
 
「あーい」けだるい感じのパン屋と助手と犬が現れました。「これ。はい」と言って、
 
牛うさ子はアンパンを食べると思いきや、牛うさ子はアンパンと入れ替わりました。
 
仕事は終わった、とばかりにパン屋と助手と牛は、入れ替わった牛うさ子の顔を持って帰りました。
 
「親方!このパン(顔)はどうしましょう?」「うーむ、今日のコロの夕食にしようか」「ワン(喜)」
 
港町のパン屋で『うさ子パン』が一大ブームを巻き起こしたのはその5年後のお話です。

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