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T-029

あの日あの時あの場所に、ヒトリのうさ子が誕生しました。
 
うさ子は地面に埋まっていました。うさ子は土から生えたようです。
 
それもそのはず、3日前に寂しがり屋の黄色うさ子がひそかにあの場所に種をまいたからです。
 
そしてお節介な緑うさ子が、昼夜問わずに水をかけ続けたからです。
 
しかし観察当番の黒うさ子がサボっていたため、生まれたてのうさ子が今どこにいるのか
 
を知っているのは、几帳面な水色うさ子だけでした。
 
水色うさ子は「なんとなく」な気持ちで生まれたてのうさ子に植毛していました。
 
すると植毛した毛はあっという間に2メートル38センチ伸びました。一本だけ。
 
それもそのはず、水色うさ子は生まれたてうさ子の他にもあらゆるうさ子に植毛していたのです。一本ずつ。
 
水色うさ子の趣味は植毛日記をつけることで、全32巻のロングベストセラーになっています。
 
しかも、「水色うさ子の植毛日記」はいまだに執筆続行中です。
 
すると赤頭巾ちゃんが「水色うさ子の植毛日記」を抱えてマッハ的に走ってきました。
 
そして「サインを!」と叫びながら、編集者と書かれた腕章を見せつつ去っていきました。
 
その走り去ったあとには、白いハンカチが点点と落ちていました。
 
水色うさ子は生まれたてのうさ子を連れてハンカチを辿って行きました。
 
水色うさ子はうさ子を連れてハンカチを辿りながらパンクズを捨てていきました。
 
そして、寂しがり屋の黄色うさ子は、そのパンクズを辿って2人の後についていきました。
 
しかし、そのパンクズはすべて腹をすかせたキュートなうさ子が食べていました。
 
困った黄色うさ子は、とりあえずキュートなうさ子を飲み込みました。
 
その時です。黄色うさ子はたちまちキュートどころかセクシーになってしまいました。これが世に言う「峰うさ子」です。
 
黄色(峰)うさ子はパンクズを辿り、ついに水色うさ子達に追いつきました。
 
そしてなんと黄色(峰)うさ子は生まれたてうさ子を賭けて水色うさ子に決闘を挑んだのです。
 
「水色うさ子!あたしと卓球勝負なさい!生まれたてうさ子を賭けて!」「やだ」水色うさ子はあっさり断りました。
 
「なんですと~!?」と叫びつつも華麗な天井サーブを黄色うさ子は放ちました。
 
水色うさ子は華やかにそして美しく、レシーブを決めました。
 
黄色うさ子は軽やかにまろやかにレシーブをかわしカレーを作っていきます。
 
生まれたてのうさ子はそのカレーを食べています。隠し味に黄色うさ子の耳をいれました。
 
「まだまだいっぱいあるからね~。」黄色うさ子は生まれたてうさ子にいいました。独り寂しそうな水色うさ子です。
 
「私は卓球勝負にもカレーにすら負けてしまったは…」水色うさ子は黄色うさ子に確かな敗北を感じました。
 
「畜生、畜生ッ!!」電柱に何度も蹴りを入れる水色うさ子。それを見て
 
「うさ子丼はいかがかな?」声をかけたのはかの有名なクッキングマスターです。
 
クッキングマスターは「召し上がれ!」といって無理矢理水色うさ子の口に押し込めました。「ほどよくまずいわ!」水色うさ子は口の中にうさ子丼をほおばりながら言いました。
 
「クッキングマスター。このどんぶりの具はいったい何なの?」と水色うさ子が尋ねると…
 
クッキングマスターは「ジョミリュンでございます、マダム。」と紳士な口調で答えました。
 
「ジョミリュン!それを知ってるおぬし、うさ子丼の秘伝レシピ所持者か!?」水色うさ子は驚愕しました。
 
「フッ。だからどうだというのだ。」マスターの化けの皮が剥がれて落ちました。
 
するとどうでしょう。マスターの化けの皮は見事な花を咲かせました。その花はジョミリュンのモトだったのです。
 
皮が剥がれたマスターの素顔を見て、水色うさ子は驚きました。「お父様!?」
 
「うさ子よ…立派に育ったな…」「お父様…いいえ、チチン…」マスターと水色うさ子は輝く夕陽の中、感動しながら夕陽の中へとゆっくり消えてゆきました。
 
残された黄色うさ子は、勝ち取った生まれたてうさ子と共に、マスター達とは反対の方向へと歩んでいくのでした。

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