- 2008/12/22
- テキスト
T-143
休日、ウインドウショッピングを楽しむうさ子は、とんでもないものが店頭にあるのを見つけました。
それは、夢にまで見た、1杯10,525円のカレールーでした。
中には、瞬間冷凍した具材も全て入った、溶かすだけのカレーなのです。
しかも具は全てタマネギです。
ですがこのタマネギが絶句!じゃない絶品!なんといってもタマネギの本場である
大宮からわざわざニートが重い腰をあげて取り寄せたものなのです。
ありがたく鑑賞したいと思います。
2~3時間で飽きました。
いよいよご賞味!「ぱくっ」
それが、うさ子が口にした最後の食べ物でした。
それ以下の食べ物が全く口に出来なくなるくらい、タマネギが絶品だったのです。
そのうち、ニートうさ子の食費が生活費の90%を占め、財産の底が見え始めています。
家賃を払えなくなったうさ子は、10LDKのアパートから追い出されました。
仕方が無いので、六本木ヒルズに家を建てることにしました。
追い出されました。追い出したセレブはうさ子が生理的に受け付けないのです。
しかし追い出されるとき、スキをついて土地の権利書をきれいに奪いました。名義も変わっています。
戸籍も奪ってきました。そして養子に入りました。
その先はイギリスの貴族「ナントカ・ジョースターI世」の大邸宅でした。
ナントカさんの家は後継ぎがいなかったので、わりとすんなり養子になれました。
「Ms.うさ子・ナントカ…これは運命というものだヨ」I世はささやきます。
そして、うさ子はその貴族の借金だけを請け負いました。
うさ子は体を売り続けました。
…そんなある日、うさ子の元へ1人の老人が訪れました。老人いわく、
「お前…濁った目をしているな…」
サングラスをかけていたので、そのせいかと思いましたが、老人はうさ子を通り越して後ろを見ているのです。
うさ子はサングラスを奪って、どぶ川に投げました。
「目が…目がぁっ…!!」
老人はその場に女の子座りでへたり込んでしまいました。
その姿があまりにも可愛いので、自ら投げ捨てたサングラスを探しに行くうさ子。
老人はその場に溶けています。うさ子が戻ってきました。その手にサングラスを持って。
「おじいちゃんの探し物はコレ?」うさ子は可愛く言ってみます。
しかしすでに溶けてしまっているため返事がありません。そこで、かき集めて固めてみました。
あの1杯10,525円のカレーが出来上がりました。うさ子、マジ感動。
「てことはおじいちゃんはタマネギなの?大宮のニートなの?」感動しつつも冷静です。
その声はおじいちゃんにはもう聞こえません。ただただ教会の鐘が鳴りひびくばかりでした。