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T-150

そこにうさ子はいませんでした。
 
かわりにうさ子のぬけがらが落ちていました。
 
まだ、あたたかいです。
 
たまたま通りかかった名もなき幼稚園児がぬけがらを着始めました。
 
あたらしいうさ子の誕生です。
 
うさ子は生まれ変わった喜びを体で表現しました。のちのうさ子体操の元です。
 
つまるところの、ヨーガです。
 
中にいる幼児は虹色の世界をさまよっていました。
 
自分の体がうさ子になったのか、うさ子の念が残っているのか、わからないのです。
 
まごまごしている幼児の前に、大量の何かが近づいてきました。うさ子です。
 
うさ子たちが幼児のまわりを囲むと、触れるか触れないかの微妙な距離で
 
小さく前へならえの格好で、わさわさ回りながら手を前後させます。
 
幼児も小さく前へならえをしてみました。
 
うさ子たちは「ノッチです!」とよだれをたらしながら叫びました。うさ子なのに。
 
幼児もとりあえず「ノッチです」と言いました。意味はわかっていません。
 
瞬く間にノッチコールに包まれる一帯。中心は意味のわかっていない幼児。
 
そのまわりをぐるりと囲み、前へならえでつながるノッチたち。もうみんなノッチです。
 
「でも、本当はあなたは誰なの?」謎の少女の声により、一同は我を
 
失い、ノッチの手のままゾンビのようにわらわらと散会しました。
 
祭りの後の寂しさをわずか数歳で悟った幼児は、ひとつ大人の階段をのぼります。
 
その手には、ゾンビを倒すべく銃がにぎられていました。
 
「殺らなきゃ…殺られる…!」幼児の目つきは覚悟を決めた男の目をして
 
いました。
 
襲い来るうさ子たち。四方八方から来るうさ子を次々と撃ち抜く幼児。
 
現実との狭間、虹色の世界。もうそこに、生きたうさ子はいませんでした。
 
「終わった…俺もあいつらも…」
 
どっこい、残りはあと4行。ナレーションで締めるにもまだ早い。あわてた幼児は
 
「さっ、そういうわけでいかがでしたでしょうか本日のうさ子体操。来週は
 
もう最終回!20分拡大でお送りします。今まで喋らなかったあの人も喋るかも?」
 
などと早口でまくし立てながら、ムーンウォークでフェイドアウトしていきました。幕。

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