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T-066

ある朝のことです。うさ子は駅のホームで体操をしていました。
 
「はッ、ふんッ、それッ!」腰のキレと手の回転が何よりも大事だとうさ子は思っているので、それはもうキレてます。
 
車掌は、うさ子の体操を毎日見るのが日課です。そのうさ子のキレ気味さに、うっとりしています。
 
うさ子はそんな車掌にブチキレました。
 
「コソコソと物陰からいっつもジロジロと、アンタ、オレオレ詐欺師!?」あらぬ罪を着せられた車掌は
 
「いかにも!」うっかり即答してしまいました。
 
うさ子が通報しようとした刹那、背後から悲鳴が。「キャー!この人、チカンよー!」
 
いつもの人寂しさから痴漢をする、近所に住む林さんの犯行でした。
 
「なんですって!?」車掌よりも、そして音速よりも早く、うさ子は悲鳴のところに駆けつけます。
 
具体的に言うと、地球を3周してから辿り着いたわけです。
 
うさ子が地球を3周する間、林さんの右腕はずっと女性に握り締められたままなので壊死しそうです。
 
「ケ…ケテタス…」どうやら、彼の最後のコトバのようです。うさ子は
 
「え?聞こえなかった。もっかい言って」と無理難題をふっかけます。
 
「よ、よせ!林さん、それ以上喋ったら、喋ったら…!」近くにいた若い男性が、死にかけの林さんの側にかけよりました。
 
林さんがうさ子に喋ったその時!林さんは俊敏な腰つきで激しいダンスを踊りました。
 
さっきうさ子がやっていた体操の真似です。
 
瀕死だったというのに、そのキレは先ほどの本家であるうさ子の体操に勝るとも劣らぬ素晴らしいキレでした。
 
「く…くやしい!アタイ、負けない!」そのキレを見たうさ子も、一心不乱に肢体を動かしました。
 
それを見た、痴漢にあっていた男性(!)は、目を潤ませながら電車に乗って去ってゆきました。
 
それからうさ子と林さんがホームを舞台にして体操し続けていると、いつしか周りには感化されて動き出した聴衆が。
 
拍手喝采する聴衆の中に、もりのどうぶつたちもちらほらいます。『ブラボー!』
 
もりのどうぶつたちが拍手をしながら駅に入ってきます。それを車掌が水鉄砲で撃ってさ。
 
そう、煮ても焼いてもそれでも喰えない男車掌もまた寂しかったのです。
 
もりのどうぶつたちは、車掌の蛮行にひどく憤慨し、車掌をタコ殴りにしました。
 
車掌はタコになりました。
 
しかしここは陸上、タコになった車掌の体はどんどん干上がっていきます。
 
カラカラなタコ状態になった車掌を、うさ子がすかさず物干しに干しました。洗濯日和です。
 
しかしうさ子は実はタコが嫌いでしたので、物干し竿ごと線路に投げ捨てました。
 
タコ車掌は必死にホーム上に上がろうとしましたが、物干し竿が線路にひっかかって上手く上がれません。
 
その時、汽笛が!
 
「ポメニョンジョキョレララドレレモノーーーーーーーフ」「それが汽笛かよ!」うさ子は的確にツッコみます。
 
無情にも、タコ車掌は電車に轢かれて肉片を辺りに爆散させました。
 
そのとき、肉片がリズミカルに動き次々と形になっていきます。車掌…?違います、あれはうさ子です!!
 
「ヤッター!やっとアタシの体操が報われたわ!」うさ子は車掌をうさ子にするために毎朝体操をしていたのです!
 
肉片に寄生した小さいうさ子は、その分布を広め、その辺の動物たちに無節操に繁殖し出しました。
 
こうしてその駅は、うさ子の駅として有名スポットになりました。人気の駅弁は、中にうさ子がもっさり詰まっています。
 
ごちそうさま。

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