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T-096

そろそろ運転免許がほしいなあ…。唐突に思い立ち、教習所に向かってうさ子は歩き始めました。
 
その途中ですてきな車を見つけたので、乗っていくことにしました。
 
教習所に着くと、その車の持ち主が走って追ってきました、「カギもねえのにどうやって乗ったんだ!」
 
「潮風に聞きなさい!ヲホホホホッ!」うさ子はやけにハイテンションです。
 
「まじめに答えろ!」持ち主の問いにニヤリと笑ううさ子。「私は天才鍵師、ピッキンガーうさ子!」
 
と言うと、うさ子は手をニュルリとカギの形に変えました。
 
しかしそれはクロスワード、タテのカギ。『ポリフェノール』でした。
 
持ち主には訳がわかりません。しっかりと"?"マークが浮かんでいます。
 
その間にクロスワードはみるみるうちに完成します。答えは『キ』『リ』『バ』『ン』『ゲ』『ッ』『ト』
 
さっそく雑誌に投稿しました。パズラーです。
 
抽選が待ち遠しいうさ子。持ち主の毛を1本ずつ抜きながら待つことにしました。
 
「オイコラてめえ!もちろん賞品は山分けなんだろうな!?」持ち主は叫びます。
 
「オイコラてめえ!そもそも賞品は一体何なんだ!?」持ち主はどなりっぱなしです。
 
「オイコラてめえ!気持ちの整理がつかない時はどうしたらいいんだ!?」しかもセンシティブです。
 
「オイコラてめえ!毛ェ抜かせろや!」うさ子は聞く耳を持ちません。
 
そうしているうちに抽選会。うさ子は毛をむしりながらテレビを見ました。
 
出ました抽選結果!!ドン!!当選者はうさ子!!そして注目の賞品は……
 
とてもやわらかいものである事は間違いなさそうでした。
 
しかしよく考えてみたら雑誌に送ったのにテレビで発表なんて?と疑問に思ううさ子。
 
おまけに賞品の特徴を踏まえて考えてみると、それは間違いなく『たいしたことないもの』でした。
 
「これいる?」持ち主に訊ねるうさ子。「いらね」持ち主即答。というわけでネットオークションに出品。
 
すると1億円で売れました。
 
そのお金で持ち主にヅラを作り、持ち主と共に車に押し込むと、カギをかけ、教習所へドーン!!
 
教習所はこっぱみじん。やることがなくなったのでうさ子は家に帰りました。
 
家の中で教官が待っていました。
 
「おい、ちょっと座れ」と教官が言います。恐ろしく冷たい口調です。
 
「もう座ってるわよ」立ったままうさ子が返します。2人の間に火花が散ります。
 
火花は花火となって空を舞い、見る者を魅了しました。
 
花火大会は大盛況のうちに終了しました。「また来年も見にこようね!」という声があちこちから聞こえてきます。
 
しかし、その陰で火花を散らして花火を起こした2人がいた事に、今はまだ誰も、気がついていなかったのでした…。
 

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